和装を楽しみたい方へ#9

着て行くところがない
-どこへ行っていいかわからない

 きものを持っていても、着て行くところがないという話もよく聞きます。ということで、きもの愛好家のかたにいつ着るのがいいでしょうかと質問してみると、大抵いつでもどこでもという返事が返ってきます。その通りですというのも無責任ですが、どこで着るのか決まっているわけではありませんし、きものでどこにでも行けるという意識の違いが一番大きいとまず感じています。

 もっとも先ほどのきもの愛好家のかたも、いつでもどこでもとおっしゃっていながら、実際にお会いする機会の半分以上は洋服をお召しになっています。つまり、きものを着ることが適していない場面以外は、それぞれのご判断次第できものを着ていただくのがよいのかと思います。さすがにきものでゴルフをしましょうというのには少々無理があると思います。

 きものを着て家の掃除をするのが夢だったなんて話も聞いたこともありますが、それは極端な例としても悪いことではないですね。私はきものは着る物のひとつ、場合によっては非日常、さらには一種のコスプレでもいいと思っています。要するにそれを通じて自分の心が豊かに幸せになれればいいと思うのです。ですから、人によっていつもきものを着たい人もいればたまに着たい人があってもよい。確かに浮く場合もあります。でも、浮いていいときも悪いときも、浮きたいときもそうでないときもいろいろあるのです。

 着て行くところがないのは意識の問題のようですが、それだけでもないようです。実はやはりここでも、きものの値段やお手入れの手間などの問題があると思います。仮にきものがもっと安くて後かたづけも洗濯も楽だったら、着て行くところがもっと増えませんか。ですから、安く買える、お手入れも楽なきものが増えれば、きっときものを着る機会も増えると思うのです。もっとも、きものの形自体に変わりはありませんから、せめて畳み方は覚えていただきたいと思います。

 洋服でもあるように、これ着てあそこ行きたいということを思いながらお店できものを選んでいただくのはいかがでしょうか。それがコンサートか、歌舞伎か、あるいは海外旅行かはお好み次第です。ちなみに、きものはコンパクトに畳めるという得意技がありますので、実は旅行にはお勧めですよ。