和装を楽しみたい方へ#8

着られない
-決まり事が多い

 きものは約束事が多くて難しいという声をよく聞きます。確かに決まりに厳しい先生がたや、こだわりの多い先輩がいらっしゃるのも事実です。でも、例えば今のきものを平安時代の人が見たらきっとびっくりして腰を抜かすと思います。下着で歩いている、と。

 このきものはこういうときに着られますか、とよく質問されますが、それってジーンズでこういう席に出ていいですかという質問と同じ感覚です。きものの何が難しいのかを聞いてみると、きものの格とか、着てゆく場面の制約とかのことが多いようです。でも、それはきものだけでなく洋服も一緒で、特に難しいのは正式な儀式やお呼ばれなどに限られるような気がします。服装というのは相手に対する敬意などの表現でもあるわけですから、結婚式などでは洋服を着る場合でも、主催者を含め、一緒に出席するお友達などに確認することが多いのではないでしょうか。

 しかも、きものは昔からあるものだけに、決まり事や格式などは大昔から伝統的に決まっていると思われがちです。しかし、訪問着ができたのは大正時代、付下げに至っては第2次世界大戦中ということだけを見ても、昔からそうした伝統があったわけではないことがわかります。成人式の振袖も戦後の風習ですし、七五三は江戸時代の発生といいますから、中では古い方なのかもしれません。要するに決まり事の多くは、せいぜい百年以内にだれかが決めたことに過ぎないようです。

 それならもっと自由でいいじゃないかということになりませんか。そうすればもっと気楽におしゃれを楽しむことができます。まして儀式とかで着るのでない普段着なら、それこそ自分流に着ていただければいいと思います。

 当店で、このときに着られますか式の質問を受けたときには、知っているだけの知識でお話をするようにしています。場合によっては、お客様と一緒にインターネットなどで調べて、着付けやマナーの本ではこう書かれています。でも、そのことを一応頭に入れておけば、最終的にはお客様のお好きでよろしいのではないですかというのが、ひさかたや式です。最低限のマナーは常に意識しながら、だれかにこんなことを言われる可能性もあるかしらと予測しつつ、最後は結局自分流でいいのだと思います。もっとも、結婚式でも日常でも、頑張っておしゃれしたことについて、人前であれこれ指摘されるようなことがあったとしたら、それはその指摘した人のほうがよっぽど非常識ですよね。