和装を楽しみたい方へ#6

着られない
-きものを知らない

 きものを着ない理由で“買えない”に次いで多いのが、この“着られない”ではないでしょうか。特に自分で着られないということですね。だからきものは難しいということになりそうですが、ちょっと待ってください。着られないのは、本当に難しいからですか。難しいからではなくて、私は単に知らないだけだと思うのです。知らない、馴染みがないからさっぱりわからない。だから着られないということではないでしょうか。

 ところで皆さんは洋服の着方はいつ習いましたか。恐らく洋服の着付け教室に通ったかたはいないでしょうし、教えてもらった記憶もないと思います。でも、生まれてすぐのことは覚えていないとしても、幼稚園に通う頃に自分ひとりで洋服が着られましたか。少なくとも赤ちゃんの頃は誰でも洋服を着せてもらっていたはずですね。それが成長するにつれ自分で洋服を着るようになり、着る順番や後ろ前や頭を出すところを間違ったりボタンを掛け違えたりしながら、いつの間にか上手に洋服が着られるようになりました。きものの着付けはこの長い練習課程が全く省かれてしまっただけだと思うのです。

 今のお話、あえて洋服という言葉を何度も使いましたが、洋服を和服(きもの)に置き換えたらどうなるでしょう。赤ちゃんの頃は自分で着られないので、誰でもきものを着せてもらって、成長すると徐々に自分できものを着るようになって、色々失敗しながらきものの着方を練習して、最後には普通に自分できものが着られるようになるのは小学生ぐらいでしょうか。恐らく貴族や武家の時代あるいは明治から昭和の初め頃までは、ちょうどこの通りきものの着方を自然な日常生活の中で教わってきたのだと思います。昔の人だって最初からきものを一人で着られたわけではありません。逆に、貴族やお姫様は自分ひとりで着ることはなかったのかもしれませんが。

 ですから、きものの着方が特に難しいのではなく、ただ知らないというだけだと思います。知らないことは覚えるしかありません。最初は誰でも知らないわけですから、まずは知っている人に教えてもらうとか自分で調べるとかする必要はあると思います。そして、やはり多少の練習が必要ということも当然のことのような気がします。最初は知らないだけだと思えば少し気が楽にはなりませんか。