和装を楽しみたい方へ#5

買えない
-買い方がわからない

 きものや着付けについてあまりご存じないかたが、買い方もわからないとおっしゃるのも不思議はありません。経験者には冗談のことのようですが、呉服店に並んでいるあの丸いものは何ですかと聞かれたことがあります。棒が並んでいるはずもないので尋ねてみると、丸いものの正体はいわゆる反物でした。そういえば、店頭にはきもの生地や襦袢地、羽織地、さらに未仕立てのなごや帯も丸巻きで並んでいます。

 つまり、店には完成品の形をしていないものがたくさんあります。それが買い方がわかりにくい理由のひとつだと思います。きものは誂え仕立てが基本ということは、誰でもご存じの常識ではありません。また、洋服のオーダーメイドも一般的ではなくなった現在、生地を手に取り、肩にかけて鏡を見て完成品を想像する。その上で自分に似合うかどうか、自分が買っていいものかを判断するのは簡単なことではないと思います。

 さらに裏地を選ぶのは楽しみでもあり、ジャストサイズにできるという長所はもちろんあります。ただ、それも全てのお客様には当てはまるわけではありません。寸法を細かく指定できるにもかかわらず、“並寸(標準サイズ)で”とのご注文や、裏はお任せでというご要望も少なくありません。並寸で幅広い体型に対応できるのもきものの良さなのです。

 私はオーダーメイドのシステムを否定しているわけではありません。それは当然あってもいいけれど、もっと買いやすいきものがあってもいいと思っています。お誂えの対極は既製品です。洋服でもかつてオーダーメイドが主流であったものが、今では既製品が当たり前になりました。既製品には、できあがりの形を確認しながら試着もできて、さらにその日に持ち帰ってすぐ着られるなどのメリットがあります。もちろんお値段もそれなりにお安くできるのは大事なところです。ポリエステルきものや夏のゆかた売り場には大量の既製品(仕立て上がり)が並び、それはすっかり当たり前になりました。ゆかたなどが身近になったのは、この影響も大いにあると思います。

 もちろんなにからなにまで全て既製にしてしまう必要はないと思います。ただ範囲をもっと広げて、ゆかたやプレタきものだけでなく、いわゆる普段着きものなどは、もっと仕立て上がりを揃えればもっと気軽に買えると思います。さらに、正絹きものや羽織、襦袢などでも既製品の割合を増やしてゆけば、少なくとも買い方がわからないお客様はいなくなるのではないでしょうか。そうするとまた一歩きものが身近になりませんか。