着物を着ない理由#3

買えない-高い
-安いきものもあるけれど

 きものが高い理由やその適正価格のお話しをしてきましたが、実は安いきものもたくさんあります。当店では今、ポリエステルの仕立て上がりきものは4千円台から、同じく半幅帯は2千円台からご用意しています。ほかにも、1万円以下で買えるきものや帯を扱っているお店は今では珍しくなくなりました。ただ、これが現在よく売れているかというと、少なくとも当店ではそうでもありません。

 きものは高いから買えないと思っていたら、安くても売れないわけですから、さあ困りました。ただ、単に値段の安さだけかというと、もちろん話はそれほど簡単でもありません。買い物をするときに一番避けたいのは、騙されて高い買い物をすること、とは前に書きました。逆に、永遠の課題であり必ず喜ばれるのは“安くていいもの”です。市場には、高くていいものとただの安物が溢れていて、この、本来一番の売れ筋であるはずの“安くていいもの”がたくさんあるとは思えません。

 もちろん、それは全く作られていないわけではありません。ただし、残念ながら、適品と呼べるものが少ないような気はします。ポリエステルプレタきものが中国で大量生産されるようになったのは、十数年前頃からでしょうか。当時は値段の新鮮さ(安さ)もあって、まとめ買いなど、それこそ飛ぶように売れたこともありました。しかし、今ではすっかり落ち着いてしまいました。安いのは安いけれど、顔がどれも皆同じになり、買いたいものがなくなってしまったというお客様の声が多くなりました。

 そこで今、当社で考える“安くていいもの”を作ってみました。素材はもめんを選びました。きものは単仕立てとして、帯は半幅帯と京袋帯をご用意しました。帯はこのサイトでもご覧いただけますし、販売もしています。きものはまだ生産量が少なくお見せしていませんが、伊勢木綿調の縞のものとデニムのものを店舗限定で販売しており、これからアップしようと今準備中です。値段はきものが19,800円、半幅帯9,800円、京袋帯15,800円です。少々宣伝っぽくなってしまいましたが、まずは一度ご覧いただきたいと思います。

 私は作り手ですから、とりあえず形にしてみたわけです。私だけでなく、今では全国に私と同じ思いで“安くて良いきもの・帯”づくりに挑戦しているかたが何人もいます。そんな製品があちこちで生まれて、お店にたくさん並ぶようになると楽しそうですね。