和装を楽しみたい方へ#11

着て行くところがない
-堅苦しい

 きものは堅苦しいとおっしゃるのは、きもの自体フォーマルの装いというイメージをお持ちのかたが多いからだと思います。留袖や振袖、喪服など、きもの姿をたくさんご覧になる機会というのは、確かに儀式の場が多いようです。あんなに豪華で、いかにも高価な感じのきものを着てどこへ行くのと考えるのも当然かもしれません。

 カジュアルきものというジャンルもあります。素材や柄行などで分けられていて、紬や小紋と言われるものがそうです。『結城紬や大島紬は、高価なものでもあくまでカジュアルで、正式の場では着られません』と着付けの本には必ず書かれています。カジュアルということで、いかにも気軽なきものと思ってしまうと大間違いなのです。きものの世界でカジュアルというのは、あくまでもフォーマルには適さないという意味で、間違いなくカジュアルと呼べるのはゆかたぐらいでしょうか。

 このように、本当のカジュアルきもの、普段着きものが実は少ないのです。洋服で言うと、毎日着ている格安量販店のものとは違うし、かといって当然ドレスのような特別なものでもない。日常で気軽に着られるきものは残念ながら多くありません。今日はちょっとおしゃれをしたいというときに、少しだけ普段と違う、あまり無理しない、きものという選択肢があってもいいと思います。

 ところで、昭和の中頃を経験している私は、当時“よそゆき”の服というのを持っていました。なんでも新しい服はまず、“よそゆき”として扱われ、お出かけとか何かの行事とか、特別の日にだけ着たものでした。それが何回か繰り返されると並のものは普段着に下ろされますが、一部の特別なものは、その後しばらく“よそゆき”のままでした。

 きものは恐らく日常着ではありません。ですから、普段着きものは洋服の普段着とは少し違って、現代生活における永遠の“よそゆき”にちょうど当てはまる気がします。部屋着や寝間着として利用していただくのもいいのですが、できれば“よそゆき”としてお出かけにご利用いただきたい。散歩でも近くのお買い物でも、もちろん銀座にもレストランにもコンサートやお芝居にも、ちょこっと着ていただける“よそゆき”があれば、きっと楽しいと思うのです。そうなれば、きものは堅苦しいから着て行くところがないとはもう言わせません。