和装を楽しみたい方へ#10

着て行くところがない
-面倒くさい

 きものが面倒くさいと言われることもあります。さらに動きにくいとか、後始末、手入れが大変などとの不満もあります。その場合、例えば面倒くさいとか動きにくいとか、何との比較ですか。相手がTシャツにジーンズだとしたら比べるものが違います。

 洋服なら、ウェディングドレスとまでいかなくても、パーティードレスにハイヒールの組み合わせと比べて、きものはそれほど動きにくいですか。確かに、普段着慣れているワンピースやスーツと比べると面倒なところはあるかもしれません。でも、きものの種類もいろいろありますから、全て振袖と比較されても困ります。例えば袴を付けるととても歩きやすくなります。また、現代きものは作業着ではないので、作業にはお勧めできません。

 確かにきものの特殊事情として、まずきものが入っているのはタンスの奥で、着る数日前にタンスから出して、しわを取るために吊しておく。その後、手間をかけて着てからも、きものはその都度洗うわけじゃないので汚したら大変、気をつけたつもりでも多少の汚れはどうしても避けられない。シミ落としも安くないし、最後に畳んでしまうのにも手間がかかる。こんな現実があるのかもしれません。

 例えば当社で今売り出し中のデニムのきものがありますが、着てみると、素材が変わるだけで驚くほどきものに対する意識が変わります。例えばしわくちゃになるのはかまわないし、汚れたら洗うだけなので地べたにも座れる。さらに洗濯機でガンガン洗ってどこかすり切れたり穴が空けば、それはそれでなお良いとなると、もはや、怖い物はありません。

 これはちょっとお行儀が悪い例としても、面倒くさいと思われるのは、高いから大事にしたいとか、絹だから丈夫でないとか、汚したら高くつくとか、さらに、何か間違いでもあったら回りがうるさいとか、そういうことが多いような気がします。ですから、面倒くさいのは、実はきものそのものよりもきものに対するイメージの問題なのです。

 例えば、ゆかたはまだましと思われるのは、着方も簡単ですし、脱いだ後に丸めておいても洗えばいいという気軽さのせいでしょう。値段も高くないので、また来年買えばいいという気楽さもあると思います。実際に確かめたことはありませんが、お祭りや花火大会の後には、大量のゆかたがそのまま脱ぎ捨てられているという悲しい話もあります。この現実を見聞きすると、きものがもはや面倒くさいもののはずはないと思います。