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広がる和装の街あそび

#010 [和装を楽しみたい方へ] 着て行くところがない-どこへ行っていいかわからない

 きものを持っていても、着て行くところがないという話もよく聞きます。ということで、きもの愛好家のかたにいつ着るのがいいでしょうかと質問してみると、大抵いつでもどこでもという返事が返ってきます。その通りですというのも無責任ですが、どこで着るのか決まっているわけではありませんし、きものでどこにでも行けるという意識の違いが一番大きいとまず感じています。

 もっとも先ほどのきもの愛好家のかたも、いつでもどこでもとおっしゃっていながら、実際にお会いする機会の半分以上は洋服をお召しになっています。
つまり、きものを着ることが適していない場面以外は、それぞれのご判断次第できものを着ていただくのがよいのかと思います。さすがにきものでゴルフをしましょうというのには少々無理があると思います。

 きものを着て家の掃除をするのが夢だったなんて話も聞いたこともありますが、それは極端な例としても悪いことではないですね。私はきものは着る物のひとつ、場合によっては非日常、さらには一種のコスプレでもいいと思っています。要するにそれを通じて自分の心が豊かに幸せになれればいいと思うのです。ですから、人によっていつもきものを着たい人もいればたまに着たい人があってもよい。確かに浮く場合もあります。でも、浮いていいときも悪いときも、浮きたいときもそうでないときもいろいろあるのです。

 着て行くところがないのは意識の問題のようですが、それだけでもないようです。実はやはりここでも、きものの値段やお手入れの手間などの問題があると思います。仮にきものがもっと安くて後かたづけも洗濯も楽だったら、着て行くところがもっと増えませんか。ですから、安く買える、お手入れも楽なきものが増えれば、きっときものを着る機会も増えると思うのです。もっとも、きものの形自体に変わりはありませんから、せめて畳み方は覚えていただきたいと思います。

 洋服でもあるように、これ着てあそこ行きたいということを思いながらお店できものを選んでいただくのはいかがでしょうか。それがコンサートか、歌舞伎か、あるいは海外旅行かはお好み次第です。ちなみに、きものはコンパクトに畳めるという得意技がありますので、実は旅行にはお勧めですよ。

#011 [和装を楽しみたい方へ] 着て行くところがない-面倒くさい

 きものが面倒くさいと言われることもあります。さらに動きにくいとか、後始末、手入れが大変などとの不満もあります。その場合、例えば面倒くさいとか動きにくいとか、何との比較ですか。相手がTシャツにジーンズだとしたら比べるものが違います。
      
 洋服なら、ウェディングドレスとまでいかなくても、パーティードレスにハイヒールの組み合わせと比べて、きものはそれほど動きにくいですか。確かに、普段着慣れているワンピースやスーツと比べると面倒なところはあるかもしれません。でも、きものの種類もいろいろありますから、全て振袖と比較されても困ります。例えば袴を付けるととても歩きやすくなります。また、現代きものは作業着ではないので、作業にはお勧めできません。

 確かにきものの特殊事情として、まずきものが入っているのはタンスの奥で、着る数日前にタンスから出して、しわを取るために吊しておく。その後、手間をかけて着てからも、きものはその都度洗うわけじゃないので汚したら大変、気をつけたつもりでも多少の汚れはどうしても避けられない。シミ落としも安くないし、最後に畳んでしまうのにも手間がかかる。こんな現実があるのかもしれません。

 例えば当社で今売り出し中のデニムのきものがありますが、着てみると、素材が変わるだけで驚くほどきものに対する意識が変わります。例えばしわくちゃになるのはかまわないし、汚れたら洗うだけなので地べたにも座れる。さらに洗濯機でガンガン洗ってどこかすり切れたり穴が空けば、それはそれでなお良いとなると、もはや、怖い物はありません。

 これはちょっとお行儀が悪い例としても、面倒くさいと思われるのは、高いから大事にしたいとか、絹だから丈夫でないとか、汚したら高くつくとか、さらに、何か間違いでもあったら回りがうるさいとか、そういうことが多いような気がします。ですから、面倒くさいのは、実はきものそのものよりもきものに対するイメージの問題なのです。

 例えば、ゆかたはまだましと思われるのは、着方も簡単ですし、脱いだ後に丸めておいても洗えばいいという気軽さのせいでしょう。値段も高くないので、また来年買えばいいという気楽さもあると思います。実際に確かめたことはありませんが、お祭りや花火大会の後には、大量のゆかたがそのまま脱ぎ捨てられているという悲しい話もあります。この現実を見聞きすると、きものがもはや面倒くさいもののはずはないと思います。

#012 [和装を楽しみたい方へ] 着て行くところがない-堅苦しい

 きものは堅苦しいとおっしゃるのは、きもの自体フォーマルの装いというイメージをお持ちのかたが多いからだと思います。留袖や振袖、喪服など、きもの姿をたくさんご覧になる機会というのは、確かに儀式の場が多いようです。あんなに豪華で、いかにも高価な感じのきものを着てどこへ行くのと考えるのも当然かもしれません。

 カジュアルきものというジャンルもあります。素材や柄行などで分けられていて、紬や小紋と言われるものがそうです。『結城紬や大島紬は、高価なものでもあくまでカジュアルで、正式の場では着られません』と着付けの本には必ず書かれています。カジュアルということで、いかにも気軽なきものと思ってしまうと大間違いなのです。きものの世界でカジュアルというのは、あくまでもフォーマルには適さないという意味で、間違いなくカジュアルと呼べるのはゆかたぐらいでしょうか。

 このように、本当のカジュアルきもの、普段着きものが実は少ないのです。洋服で言うと、毎日着ている格安量販店のものとは違うし、かといって当然ドレスのような特別なものでもない。日常で気軽に着られるきものは残念ながら多くありません。今日はちょっとおしゃれをしたいというときに、少しだけ普段と違う、あまり無理しない、きものという選択肢があってもいいと思います。

 ところで、昭和の中頃を経験している私は、当時“よそゆき”の服というのを持っていました。なんでも新しい服はまず、“よそゆき”として扱われ、お出かけとか何かの行事とか、特別の日にだけ着たものでした。それが何回か繰り返されると並のものは普段着に下ろされますが、一部の特別なものは、その後しばらく“よそゆき”のままでした。

 きものは恐らく日常着ではありません。ですから、普段着きものは洋服の普段着とは少し違って、現代生活における永遠の“よそゆき”にちょうど当てはまる気がします。部屋着や寝間着として利用していただくのもいいのですが、できれば“よそゆき”としてお出かけにご利用いただきたい。散歩でも近くのお買い物でも、もちろん銀座にもレストランにもコンサートやお芝居にも、ちょこっと着ていただける“よそゆき”があれば、きっと楽しいと思うのです。そうなれば、きものは堅苦しいから着て行くところがないとはもう言わせません。

#013 [和装を楽しみたい方へ] キモチとモノ、そして"よそゆき"を提案したい

 予定では以上で終わりにするつもりでしたが、ここまで書いてきて、やはり最後にひとまとめをしようと思いました。きものを着ない理由はいろいろありますが、きものを着たい側にも着せたい側にも、少しずつ変わらないといけないところがあるようです。そして、それは解決できない問題でもなさそうです。

 着たい側はキモチの問題のようでした。まず、きものについてとにかく知らない。でも、それは社会のせいで、ご本人が悪いのではありません。そして、きものや着付けや決まり事などが特別難しいわけではなくて、それもただ知らないだけでした。ですから、知らないなら、覚えるところから気楽にスタートしていただくだけなのです。それも、それほど専門的な知識は必要ありません。その上で、無意識のうちに練習を積んだ洋服の着方と同じで、多少の練習は必要なようです。

 着せたい側の作り手、売り手の課題はやはりモノでしょうか。なにが求められているのかをしっかり把握して、安くていいものを作り、供給する。一方で、もちろん芸術品もぜひ残していただきたいと思います。車でも数千万円の外車を買うかたがいれば、軽でいいというかたもいらっしゃるわけです。ただ、今多く求められているのは恐らく軽自動車の方で、足りないのは安くていい普段着きもの、本当のカジュアルきものだと思います。

 私の答えは、値段は洋服並み、最高でもせいぜい単品で10万円まで、さらに5万、できればきものと帯で3万円で提供できるものを作ることです。とりあえず、もめんのきものと帯を作りました。ただ、素材のプロフェッショナルとしては、素材を限定しないで、綿でも絹やポリエステルでも、こだわりのものづくりを続けたいたいと思います。そんな“よそゆき”、普段着きもの、本当の意味でのカジュアルきものを提案できれば最高です。

 きものを着たい側も着せたい側も、こんな課題を少しずつ解決することで、きものを着て楽しむ機会が増えればおしゃれの幅がもっと広がると思います。きものは日本の伝統であり民族衣装だからとか難しいことは抜きにして、きものを着ることが気軽に気楽にできて、みんなで楽しくなれば自然にきものを着る人が増えると思いませんか。

 最後までお付き合いいただき、大変ありがとうございました。


[和装を楽しみたい方へ 終わり]

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