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和装の着付に自由を

#007 [和装を楽しみたい方へ] 着られない-きものを知らない

 きものを着ない理由で“買えない”に次いで多いのが、この“着られない”ではないでしょうか。特に自分で着られないということですね。だからきものは難しいということになりそうですが、ちょっと待ってください。着られないのは、本当に難しいからですか。難しいからではなくて、私は単に知らないだけだと思うのです。知らない、馴染みがないからさっぱりわからない。だから着られないということではないでしょうか。

 ところで皆さんは洋服の着方はいつ習いましたか。恐らく洋服の着付け教室に通ったかたはいないでしょうし、教えてもらった記憶もないと思います。でも、生まれてすぐのことは覚えていないとしても、幼稚園に通う頃に自分ひとりで洋服が着られましたか。少なくとも赤ちゃんの頃は誰でも洋服を着せてもらっていたはずですね。それが成長するにつれ自分で洋服を着るようになり、着る順番や後ろ前や頭を出すところを間違ったりボタンを掛け違えたりしながら、いつの間にか上手に洋服が着られるようになりました。きものの着付けはこの長い練習課程が全く省かれてしまっただけだと思うのです。

 今のお話、あえて洋服という言葉を何度も使いましたが、洋服を和服(きもの)に置き換えたらどうなるでしょう。赤ちゃんの頃は自分で着られないので、誰でもきものを着せてもらって、成長すると徐々に自分できものを着るようになって、色々失敗しながらきものの着方を練習して、最後には普通に自分できものが着られるようになるのは小学生ぐらいでしょうか。恐らく貴族や武家の時代あるいは明治から昭和の初め頃までは、ちょうどこの通りきものの着方を自然な日常生活の中で教わってきたのだと思います。昔の人だって最初からきものを一人で着られたわけではありません。逆に、貴族やお姫様は自分ひとりで着ることはなかったのかもしれませんが。

 ですから、きものの着方が特に難しいのではなく、ただ知らないというだけだと思います。知らないことは覚えるしかありません。最初は誰でも知らないわけですから、まずは知っている人に教えてもらうとか自分で調べるとかする必要はあると思います。そして、やはり多少の練習が必要ということも当然のことのような気がします。最初は知らないだけだと思えば少し気が楽にはなりませんか。

#008 [和装を楽しみたい方へ] 着られない-着付けが難しい

 前回、きものを着られないのは難しいからではなく、きものや着方を知らないだけというお話をしました。そして、それだけでなく、まず、きものを着るためには何が必要かもわかりません。また、それが揃っていよいよ着付けが始まるとしても、何から手を付けていいかさっぱりわからないわけです。もうひとつ、知らないついでに大切だけれど見落としがちなのは、正しい着姿の完成したかたちも知らないということです。

 そして、知らないことは覚えていただくしかありませんから、まずはとりあえず本やインターネットで調べて見てください。身近に先生がおいでなら、もちろん教えていただくのもいいと思います。本やインターネットで必要なものや正しい着姿を知り、着方の動画などが見つかったら、とにかく一度着てみることをお勧めします。今では、インターネットを見ながら初めてきものを着てみましたなんてかたも現れ始めています。

 どんな格好になってもいいので、ここでまず挑戦するかどうかが分かれ目です。ぜひご自分で着てみて下さい。最初からうまく行くはずはありませんが、3回ぐらい練習するとそれなりに格好になるようです。さらに練習を繰り返すと、いつもうまくいかない問題点がわかってくるので、できれば近くの名人に聞いてみる。意外と近くにそんな方がいらっしゃるものです。そこでポイントを教えていただき、その繰り返しで上達するのです。

 名人には、実際の着姿を見ていただくことができれば最高です。正解がわからないから不安で迷うわけですから、着姿を一度確認していただければ不安は一気に解消します。それはきっと次の自信につながるはずです。当店でもそんなお手伝いができればいいといつも思っています。残念ながらスタッフに名人はおりませんが、幸いなことにお客様の中には着付けの名人や和裁の名人がたくさんおいでですから何かお役に立てることはありそうな気がします。

 自分でできるというのは便利なもので、締め方の強さも自分で加減できるので妙に苦しかったり緩かったりしません。また、何より着崩れたときにさっと手直しができることで安心感が違います。花嫁や成人式の着付けまで自己流でとは申しませんが、ご自分の着付けはご自分で、これが基本だと思います。昔の人は当然そうしたわけですし、ご自分で美しいと思える理想の姿もはっきりしてくると思います。

#009 [和装を楽しみたい方へ] 着られない-決まり事が多い

 きものは約束事が多くて難しいという声をよく聞きます。確かに決まりに厳しい先生がたや、こだわりの多い先輩がいらっしゃるのも事実です。でも、例えば今のきものを平安時代の人が見たらきっとびっくりして腰を抜かすと思います。下着で歩いている、と。

 このきものはこういうときに着られますか、とよく質問されますが、それってジーンズでこういう席に出ていいですかという質問と同じ感覚です。きものの何が難しいのかを聞いてみると、きものの格とか、着てゆく場面の制約とかのことが多いようです。でも、それはきものだけでなく洋服も一緒で、特に難しいのは正式な儀式やお呼ばれなどに限られるような気がします。服装というのは相手に対する敬意などの表現でもあるわけですから、結婚式などでは洋服を着る場合でも、主催者を含め、一緒に出席するお友達などに確認することが多いのではないでしょうか。

 しかも、きものは昔からあるものだけに、決まり事や格式などは大昔から伝統的に決まっていると思われがちです。しかし、訪問着ができたのは大正時代、付下げに至っては第2次世界大戦中ということだけを見ても、昔からそうした伝統があったわけではないことがわかります。成人式の振袖も戦後の風習ですし、七五三は江戸時代の発生といいますから、中では古い方なのかもしれません。要するに決まり事の多くは、せいぜい百年以内にだれかが決めたことに過ぎないようです。

 それならもっと自由でいいじゃないかということになりませんか。そうすればもっと気楽におしゃれを楽しむことができます。まして儀式とかで着るのでない普段着なら、それこそ自分流に着ていただければいいと思います。

 当店で、このときに着られますか式の質問を受けたときには、知っているだけの知識でお話をするようにしています。場合によっては、お客様と一緒にインターネットなどで調べて、着付けやマナーの本ではこう書かれています。でも、そのことを一応頭に入れておけば、最終的にはお客様のお好きでよろしいのではないですかというのが、ひさかたや式です。最低限のマナーは常に意識しながら、だれかにこんなことを言われる可能性もあるかしらと予測しつつ、最後は結局自分流でいいのだと思います。もっとも、結婚式でも日常でも、頑張っておしゃれしたことについて、人前であれこれ指摘されるようなことがあったとしたら、それはその指摘した人のほうがよっぽど非常識ですよね。

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