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「着物は高い」は過去のこと?

#002 [和装を楽しみたい方へ] 買えない-高い-きものが高い理由

 きものや帯が高いのは、まずは多くが正絹と言われる絹製品だからです。絹糸は高いもので、特に和装製品で使われるものは1kgで1万円を超えるものもあります。もっと高い糸が使われることも珍しくありません。原料となる糸の中には、ポリエステルや綿などのように千円以下で買えるものもありますから、それらに比べるとずいぶん高いことがおわかりいただけると思います。

 ただ、例えばきもの1枚分で使う糸はせいぜい1kg前後ですから、そこでの差は1万円程の材料代だけでしょう。もっとも絹の場合は、染めや、織りや、色々な加工についても手間のかかることが多く、それも値段を押し上げますから、それらの合計では材料代をはるかに大きな差額となります。が、それでも30万や50万円にはなりません。

 ところで、“手織りの帯”や“手描きのきもの”はよく耳にされると思います。もう一つの高い理由がこれです。デザインも人の手によるものですし、和装では色々な工程で伝統工芸的な手作業による技術が使われています。人の手間にはきりがなく、製作期間に1か月かかるとしたら当然それなりの費用がかかり、それだけ高いものになります。ただし、これも全ての製品について言えるわけではなく、高額な製品になればなるほど、手間暇を惜しみなくかけて作られていることが多いということでご理解下さい。

 このように高くなる理由は色々説明できるのですが、では、絹製品は必ず数十万円になるのかというと実はそうでもありません。例えば安い絹糸もたくさんありますし、工夫すればそこそこの値段で正絹ものもできます。だからといって綿やポリエステルと同じレベルまで安く作れるかというと当然限界はありますが、もっと値頃の絹製品があっても良いと思います。

 さて、価格優先で考えると、そもそもきものは絹でなければならないかということも考えられます。きものは絹が本物と思われがちですが、すでに遠い昔から絹は区別された特別なものでした。“布”という言葉自体、実は主に麻などの植物繊維による織物のことを指していたくらい、麻や綿のきものが伝統的に着られていたそうです。風合いや色など絹独特の良さはほかのものに代えられませんが、絹以外の材料でも本物のきものはできるのです。手間をかけすぎないことで売値を優先しつつ、オリジナリティあふれるきものや帯があってもいいと思います。

#003 [和装を楽しみたい方へ] 買えない-高い-きものの適正価格

 1kgのワタと1kgの鉄の塊ではどっちが重い?と聞かれて、思わず鉄と答えてしまった経験はありませんか。同じように30万円のきものと30万円の洋服ではどっちが高い?と聞かれたら、思わず洋服と答えてしまうのは私だけでしょうか。

 例えば30万円の訪問着や袋帯といえば、呉服屋さんや百貨店の呉服売り場にはどこでもあるような商品です。それはインターネットでもたくさん出品されています。一方30万円の洋服となるとインターネットで探すのは少々難しくなります。さらになかなか手の届かないヨーロッパの一流ブランドでも、単品ならば買えてしまいそうな高価格帯になると思います。

 表現が難しいのですが、きもの全体の中での30万円という値段のイメージは、洋服で考えると10万から15万円ぐらいに当たる気がします。つまり庶民感覚では、もちろん決して安物ではないけれど、まだまだ上がある、やや高級な商品といったところでしょう。それだけきものは高くて当然と思われているわけです。そういう意識と覚悟で売り場においでいただけるのは非常にありがたいことで、売る側としては助かります。ただ、それは必ずしも良いことだけではないような気がします。

 買う立場からすると、買い物で一番避けたいのは騙されることです。何かを買ったとして、別のお店でそれと同じものが自分の買った半額で売られていたら、相当がっかりしますね。日本では普通そんなことないような気もしますが、残念ながらきもの業界ではそれがまかり通ってしまう場合があるようです。呉服屋さんで、ちょっと買う気を見せるといきなり半値になったなんて聞いたことがありますが、それって本当の値段はどっちなのでしょう。実は、もっと安いのかもしれません。つまり、きものの場合、商品を見て、普通それがどれくらいの値段なのか見当がつかない。要するに、値段が高い安いということ以前に、それが適正かどうかの判断ができないことが不安につながるのだと思います。

 業界でも、10万円のきものは安物(とは私は思いませんが)と言わずに、できれば10万円の洋服と同じような価値観で見られる製品があるべきだと思います。全ての適正価格がわかるわけではないからこそ、まずは同じ着る物としての洋服の価値観に近づける。つまり少なくとも洋服並みの値段できものが買えれば、きものがもっと身近になると思います。それができるかどうかはわかりませんが、そういうものづくりをしてもおもしろいと思います。いかがでしょうか。

#004 [和装を楽しみたい方へ] 買えない-高い-安いきものもあるけれど

 きものが高い理由やその適正価格のお話しをしてきましたが、実は安いきものもたくさんあります。当店では今、ポリエステルの仕立て上がりきものは4千円台から、同じく半幅帯は2千円台からご用意しています。ほかにも、1万円以下で買えるきものや帯を扱っているお店は今では珍しくなくなりました。ただ、これが現在よく売れているかというと、少なくとも当店ではそうでもありません。

 きものは高いから買えないと思っていたら、安くても売れないわけですから、さあ困りました。ただ、単に値段の安さだけかというと、もちろん話はそれほど簡単でもありません。買い物をするときに一番避けたいのは、騙されて高い買い物をすること、とは前に書きました。逆に、永遠の課題であり必ず喜ばれるのは“安くていいもの”です。市場には、高くていいものとただの安物が溢れていて、この、本来一番の売れ筋であるはずの“安くていいもの”がたくさんあるとは思えません。

 もちろん、それは全く作られていないわけではありません。ただし、残念ながら、適品と呼べるものが少ないような気はします。ポリエステルプレタきものが中国で大量生産されるようになったのは、十数年前頃からでしょうか。当時は値段の新鮮さ(安さ)もあって、まとめ買いなど、それこそ飛ぶように売れたこともありました。しかし、今ではすっかり落ち着いてしまいました。安いのは安いけれど、顔がどれも皆同じになり、買いたいものがなくなってしまったというお客様の声が多くなりました。

 そこで今、当社で考える“安くていいもの”を作ってみました。素材はもめんを選びました。きものは単仕立てとして、帯は半幅帯と京袋帯をご用意しました。帯はこのサイトでもご覧いただけますし、販売もしています。きものはまだ生産量が少なくお見せしていませんが、伊勢木綿調の縞のものとデニムのものを店舗限定で販売しており、これからアップしようと今準備中です。値段はきものが19,800円、半幅帯9,800円、京袋帯15,800円です。少々宣伝っぽくなってしまいましたが、まずは一度ご覧いただきたいと思います。

 私は作り手ですから、とりあえず形にしてみたわけです。私だけでなく、今では全国に私と同じ思いで“安くて良いきもの・帯”づくりに挑戦しているかたが何人もいます。そんな製品があちこちで生まれて、お店にたくさん並ぶようになると楽しそうですね。

#005 [和装を楽しみたい方へ] 買えない-買うところがない

 いわゆる町の呉服屋さんというのは、比較的小さな町にも必ず昔からありました。現在その数が減ったとは言え、まだそこそこのお店は残っていると思います。ですから、買うところがないというのは、呉服屋さんがないということではなく、知ってる店がないとか、店があっても入る気にならないということだと思います。

 よく聞かされる悪いイメージとは・・・敷居が高い、待ちかまえている、すぐに声を掛けられる、愛想が悪い、つきまとわれる、根ほり葉ほり聞かれる、売りつけようとする、無理矢理買わされそう、高いものを押しつけられそう、売る姿勢に問題あり、などでしょうか。小売店を営業している私にとっても非常に耳が痛いことで、それぞれのお店にも事情はおありのことと思います。ただ、ほかのお店のことはわかりませんので、ここでは当店のことをご紹介させていただきます。多くのお客様にご来店いただけるよう、実際に私たちが心がけていることです。

 まず、ひさかたやでは入りやすい店を目指して開放的に、なるべく外から中が見えるようにしています。また、私自身呉服売り場でお店の人につきまとわれるのが嫌なので、積極的な接客はしません。もちろん『いらっしゃいませ』とお迎えはしますが、『お嬢様のものをお探しですか』とか、あれやこれやお尋ねはせず、お客様の自由に店内をご覧いただくようにしています。ただ、冷たく愛想の悪い店と思われるのも困りますので、“当店ではお客様にゆっくりとご覧いただきたいので、こちらからのお声掛けは控えさせていただいております。ご用の際はお気軽にスタッフにお申し付け下さい。”と表示しています。

 表示といえば、きものも帯も、裏地や芯の値段を含む、仕立て上がり完成品価格の表示を心がけています。さらに、どうしても説明が必要なことはPOPで表示します。また、高価なものだけでなく、色々な着付け用品、小物や和雑貨も充実させて、色々なニーズに対応する努力をしているつもりです。白足袋は13cmから29cmまで揃っているのが自慢です。それから、洋服のように試着して選んでいただけるように、仕立て上がり商品の割合を増やしていますし、今後もっとそうするつもりです。 

 以上は当店の一例ですが、呉服屋さんも多様化しています。もちろん昔ながらのところ、大手チェーン店、若いスタッフがいる店、ディスカウンター、リサイクルショップ、インターネットもあります。“怖いお店はいません宣言”をしているお店もあるそうですから、どこも同じと決めつけずに、ぜひ色々なお店を見比べてください。

#006 [和装を楽しみたい方へ] 買えない-買い方がわからない

 きものや着付けについてあまりご存じないかたが、買い方もわからないとおっしゃるのも不思議はありません。経験者には冗談のことのようですが、呉服店に並んでいるあの丸いものは何ですかと聞かれたことがあります。棒が並んでいるはずもないので尋ねてみると、丸いものの正体はいわゆる反物でした。そういえば、店頭にはきもの生地や襦袢地、羽織地、さらに未仕立てのなごや帯も丸巻きで並んでいます。

 つまり、店には完成品の形をしていないものがたくさんあります。それが買い方がわかりにくい理由のひとつだと思います。きものは誂え仕立てが基本ということは、誰でもご存じの常識ではありません。また、洋服のオーダーメイドも一般的ではなくなった現在、生地を手に取り、肩にかけて鏡を見て完成品を想像する。その上で自分に似合うかどうか、自分が買っていいものかを判断するのは簡単なことではないと思います。

 さらに裏地を選ぶのは楽しみでもあり、ジャストサイズにできるという長所はもちろんあります。ただ、それも全てのお客様には当てはまるわけではありません。寸法を細かく指定できるにもかかわらず、“並寸(標準サイズ)で”とのご注文や、裏はお任せでというご要望も少なくありません。並寸で幅広い体型に対応できるのもきものの良さなのです。

 私はオーダーメイドのシステムを否定しているわけではありません。それは当然あってもいいけれど、もっと買いやすいきものがあってもいいと思っています。お誂えの対極は既製品です。洋服でもかつてオーダーメイドが主流であったものが、今では既製品が当たり前になりました。既製品には、できあがりの形を確認しながら試着もできて、さらにその日に持ち帰ってすぐ着られるなどのメリットがあります。もちろんお値段もそれなりにお安くできるのは大事なところです。ポリエステルきものや夏のゆかた売り場には大量の既製品(仕立て上がり)が並び、それはすっかり当たり前になりました。ゆかたなどが身近になったのは、この影響も大いにあると思います。

 もちろんなにからなにまで全て既製にしてしまう必要はないと思います。ただ範囲をもっと広げて、ゆかたやプレタきものだけでなく、いわゆる普段着きものなどは、もっと仕立て上がりを揃えればもっと気軽に買えると思います。さらに、正絹きものや羽織、襦袢などでも既製品の割合を増やしてゆけば、少なくとも買い方がわからないお客様はいなくなるのではないでしょうか。そうするとまた一歩きものが身近になりませんか。

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