先染めは格下?

2015年6月18日

ところで、これまで話題にしないのに突然ですが、“格”を考える上で、先染めと後染めとでは後染めの方が格上と言われています。私は主に先染めの帯を作っていますので、その作り手として、格を語る上でどうしても触れておきたいことがあります。

きものの序列では、留袖・振袖から小紋までは後染めが中心です。お召、紬、あるいは銘仙、絣などが先染めのきものです。そして、この格の違いは何で決まるのでしょう。恐らくこれも諸説あるでしょうが、私は、糸づくりなど技法の差以上に、実は単に色目、色数、華やかさの問題だと思っています。

後染めは白生地に柄を付けるわけですから、絵を描くのと同じでたくさんの色数が使えます。先染めは染めた糸を織り込むことで柄を表現しますので、無限の色は使えません。例えば100色の絵の具(染料)を選べばいいだけなのと、絵の具(染料)で予め100色の糸を染めて準備しておいて、その糸を選んで織ることの差だと思ってください。

ですから先染め織物は、特に友禅などの後染めに比べて、どうしても色数という点ではかないません。“格”=フォーマル度ですから、やはりフォーマルな席には絢爛豪華な多色使いがふさわしいのです。ただ帯は例外で、無限と思えるほどの色数を使った高級西陣帯もあります。これは厚く重くなってしまうので用途が限られてしまいますが、きものと違い、帯は先染めのほうが格が上というのも、これで説明できると思います。

では、地味目な先染めの良さについても最後にご紹介しておきましょう。それは、風合いなど生地自体のおもしろさ、個性です。高級服地の多くが先染め織物なのと同様、先染めのきものにはどれも独特の味があります。“格”の違いは単に色数の差と割り切って、略礼装以下の場面で紬などどんどんお召しになり、お楽しみいただければと思います。

・先染めの格が低いのは地味な色数が理由なので、もっと自由に着てもいい