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ひさかたろまん オフィシャルブログ

お茶のきもの

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 いつも普段きものの着方を提案しているひさかたろまんですが、だからこそ説明を避けて通れないところがあります。それは、お茶のきものです。

 いろいろな習い事をされている方がいらっしゃいますが、その中で、きものと非常に関係が深いもののひとつにお茶が挙げられます。当社のお客様も、着付け教室に通われている方以上にお茶をされている方が多いと感じています。


 当然そこで、“このきものと帯はお茶に使えますか”と聞かれることが多いのですが、実はこれが難しい質問です。いつもであれば、最後はご本人のお好きに、ご自由にとお伝えしていますが、こればかりは簡単にお答えできません。

 実は、私もわずか、とも呼べないほどほんのわずかお茶を体験したことがあります。それだけの経験ですから、もちろん深くはわかるはずありません。でも、そのときの体験やベテランの方のお話、あるいは今こうして仕事を通して接してみると、どうやらお茶の本質とは“おもてなしの心”とのことです。

 そして不謹慎にも、私は、お茶はおもてなしのこだわりゲームであると感じています。お道具はもちろん掛け軸や花まで、”あなたのためにここまでこだわったのがわかりますか”、“さらにこんなことまでしていただいて、とても嬉しいですよ”のようなやりとりを楽しむ心理ゲームのようです。ですから、お茶のきものは、季節はもちろん色、柄や小物、あるいはそれにまつわる蘊蓄やストーリーに至るまで徹底的にこだわっていただくのが本来の姿だと思います。

 ただし、どこまでこだわるべきかは時と場合によっても当然異なるでしょうし、仮にその時と場合を教えていただいても我々には判断することができません。わかることだけは知識の範囲内の一般的な説明はさせていただきますが、最後には必ず、それは先生に確認してくださいというお返事になります。

 いつものお稽古のときからこだわることを指導される先生も、普段はもっと気楽に楽しんでという先生もいらっしゃいます。ベテランになるとご自分で判断されたり、先生のおっしゃることを先回りすることがあるのかもしれません。恐らく、きもの選びもお茶の楽しみのひとつなのではないでしょうか。ですから、特に質問の多い初心者の方ほど先生や先輩の皆さんに確認されるのがいいと思います。

 これまで、気軽に気楽に、自分らしくとか、難しく考えずに自由にとか、格なんか意識しなくてもと言い続けてきたひさかたろまんではありますが、それは、あくまでも着るもののお話しです。お茶のきものは着るものの範囲ではなく、やはりお茶の世界観の中で考えていただくほうがよろしいかと感じております。

 ということで、いつもの主張に反して、お茶のきものについてだけは極めて常識的な返事しかできませんことをお許しください。

きものの決まりごと

 きくちいまさんが大変なことになっているようですね。業界人として、私も本は何冊か読んでいますし、フェイスブック友達でもあります。もちろん例の、“所詮・・・”という発言は問題でしょうが、これまでのきものについての考え方には共感するところが多かっただけに残念です。そして、いまさんの過去の意見までいいか悪いかという議論もあるようです。ただ、そういうことよりも、様々な声に触れたこの機会に“人の振り見て我が振り直せ”ということで、自分の発言についても気にしてみた次第です。

ひさかたろまんも“もっと気軽に気楽に、自由に着て欲しい”という提案はしていますが、そう言えば、確かに何でもありでいいとは思っていないところもあります。たとえば、左前に着る着方はとりあえずNGです。かといって、お直しおばさまのように街で見つけてそれをその場で指摘するつもりはありませんが、イラストの間違いもすごく気になってしまいます。でもこれはきもの特有のことかというとそうでもなく、男性が女性合わせの洋服を着ているのに違和感を持つのと同じような気がします。

 また、本当にきものの決まり事が多いのかというと、実はそれも少し違うように感じます。きものも着る場面は様々ですが、毎日着ている洋服に比べると、きものの出番は非日常の儀式の割合が多いのが現状です。儀式、すなわちフォーマルの席の装いというのはきものに限らずルールがあります。つまり、こういうときにはこういうきものを着るとかの面倒なルールの多くは、実はフォーマルについてのルールとも言えます。ですから、自宅でどんな洋服をどう着ていようが勝手なのと同じく、普段きものもルールにこだわる必要はないはずです。

 ただし、右前などのきものの最低限のルールは必要と思う反面、きものも時代とともに変わってゆくべきだと思うところも実はあります。現代着物姿が確立されたのは大正から昭和初期とも言われています。実際にきものの歴史を見ても、長い時代をかけて形や着こなしが大きく変わってきましたし、大流行して消えていった商品もたくさんあります。おそらく、紫式部がタイムスリップして現代に現れたら、今のきものの形や着方に、これはあり得ないと目を丸くすることでしょう。要するに、きものも環境の変化に適応するように次第に変化してきていたのです。

 きものの中で、最近一番特徴的な変化をしたのはゆかたではないでしょうか。形や柄こそ大変化はありませんが、少し前なら浴衣に半衿はあり得ないし、帯締も足袋も使わないのが常識でした。でも、今のお祭りなどを見ると実にいろいろなゆかたの着方があります。しかもそれらは専門家が進めたことではなく、着る人自身がいろいろ工夫して楽しむようになって、結果的に着方が大きく変わりました。これがファッションの自然な流れでもあり、やはりその変化は受け入れる必要があると思います。

 いろいろと回りくどい言い方をしましたが、きもののルールだけが面倒くさいのではなく、ルールの多くはフォーマルのルールです。そして、きものも時代とともに変わってゆかなければなりません。それがどんな風に変わるかというのは、特に普段着の世界では着る人次第です。こうでなければならないと決めつけないで、その変化や多様性をみんなで受け入れる寛容さが必要なのだと思います。まずは自分との違いに気づいてそれを認め、そんなやり方考え方もあるのかということを理解することが大切です。

 そして、これまでの私の意見も皆さんに押しつけるつもりはありません。いいか悪いか、正しいか間違っているかではなく、こういう考え方もあるということを知っていただけることだけで、まずは十分なのです。

普段きもののすゝめ

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きものを着たい人はたくさんいるのに、
実際に着ている人はわずかしかいません。
きものを着ない理由はたくさんありますが、
その中で作り手がまず解決できるのは、
“買える値段”に“扱いやすさ”と気づきました。

それから、お客様の多くの声は、
普段に着られるきものがもっと欲しい、と。
確かにまちにあるのは儀式用きものばかり。
きものをもっと着て欲しいと言いながら、
普段きものはほとんどなくなってしまいました。
これも作り手の課題と感じました。
きものにもベーシックカジュアルが求められています。

そこで、もめんのきものと帯を作りました。
色柄は普段着にふさわしいものを選びました。
セットで3万円と洋服並みに買いやすく、
これなら家庭洗濯やクリーニングで充分です。
お手入れが楽だと着る機会もぐんと増えるのです。

さらに、普段きものだから着こなしも自由、
面倒な決まり事に縛られることもありません。
下着や小物も自分流で合わせましょう。
普段きものを気軽に気楽に楽しんでみませんか。

もめんの帯の新作をこれからご紹介します。

 

#019[きものの格について]格は難しいことじゃない

 現代きものには、実はそれほど長い歴史と伝統はありません。長くて江戸時代、中には第2次大戦後に誕生したものもあります。ですから、きものの“格”自体、実は歴史的に重要な意味があるわけでも、明らかな根拠があるわけでもなく、『どこかのだれか』が言い出したことが伝わっているに過ぎません。私は、“格”とは難しい決まりではなく、安心を求める日本人特有の、実は逆に合理的なクラス分けのような気がしています。

 例えば、そこそこのお呼ばれでも、とりあえず訪問着という形になってさえいれば恥ずかしくないのです。また、振袖を着ていればどこへ行っても怖いものはありません。“格”とは、特に洋服でも難しい正装の目安と考え、逆に利用すればよいのです。

 きものと帯の“格”を合わせるというのも同様に目安と理解できます。フォーマル度の高いきものにカジュアルな帯を合わせないのが自然でしょう。それをどこで判断するかは別として、きものと帯を合わせるときに、なんとなく全体の雰囲気も合わせるということに過ぎません。この、目安と決まりを混同されているところが、きものを難しくしてしまっているようです。例えば、きものの柄に使われた1色を帯に使うとか、きものと帯は同系色、あるいは反対色で合わせるとか、織りのきものには染めの帯を合わせるとか、これらは全て決まりではなく、こうすると合わせ易いという目安、先人の知恵なのです。

 留袖と振袖はフォーマル専用の別格とすると、訪問着以下で細かいことを言うのは、そろそろなしにするのはいかがでしょうか。お友達とのランチで訪問着もいいでしょうし、結城紬でパーティーや小紋でお子さまの入学式も問題ありません。もちろん服装は相手に対する敬意を表すものです。ただ、小紋でもそれは“きもの”です。だからこそ、格下のものを着ていると見るのではなく、いつものワンピースの代わりに、『わざわざ』きものを着ておしゃれしたと理解する心の豊かさこそが、きものに必要とされていると感じます。

 ・“格”とは合理的な目安だから、利用するところだけ積極的に利用しよう

[きものの格について]終わり

#018[きものの格について]先染めは格下?

 ところで、これまで話題にしないのに突然ですが、“格”を考える上で、先染めと後染めとでは後染めの方が格上と言われています。私は主に先染めの帯を作っていますので、その作り手として、格を語る上でどうしても触れておきたいことがあります。

 きものの序列では、留袖・振袖から小紋までは後染めが中心です。お召、紬、あるいは銘仙、絣などが先染めのきものです。そして、この格の違いは何で決まるのでしょう。恐らくこれも諸説あるでしょうが、私は、糸づくりなど技法の差以上に、実は単に色目、色数、華やかさの問題だと思っています。

 後染めは白生地に柄を付けるわけですから、絵を描くのと同じでたくさんの色数が使えます。先染めは染めた糸を織り込むことで柄を表現しますので、無限の色は使えません。例えば100色の絵の具(染料)を選べばいいだけなのと、絵の具(染料)で予め100色の糸を染めて準備しておいて、その糸を選んで織ることの差だと思ってください。

 ですから先染め織物は、特に友禅などの後染めに比べて、どうしても色数という点ではかないません。“格”=フォーマル度ですから、やはりフォーマルな席には絢爛豪華な多色使いがふさわしいのです。ただ帯は例外で、無限と思えるほどの色数を使った高級西陣帯もあります。これは厚く重くなってしまうので用途が限られてしまいますが、きものと違い、帯は先染めのほうが格が上というのも、これで説明できると思います。

 では、地味目な先染めの良さについても最後にご紹介しておきましょう。それは、風合いなど生地自体のおもしろさ、個性です。高級服地の多くが先染め織物なのと同様、先染めのきものにはどれも独特の味があります。“格”の違いは単に色数の差と割り切って、略礼装以下の場面で紬などどんどんお召しになり、お楽しみいただければと思います。

 ・先染めの格が低いのは地味な色数が理由なので、もっと自由に着てもいい

#017[きものの格について]格ときもの、着るのはどっち?

 “格”を意識する上で特に重要なのは、正礼装、準礼装などの、いわゆる正装の部分というお話を前にしました。それに次ぐ略礼装は、きものでは訪問着、洋服ではワンピース、スーツということですから、ずっと身近になりました。

 さて、ここでは、“格”の全貌を知るために、略礼装以下についても考えてみることにします。きもの入門の本などで細かくクラス分けされているものを見ると、
 -(略礼装)-外出着-おしゃれ着-街着-普段着-ゆかた
と続きます。それに対応するきものは、訪問着に続いて付下げ以下が紹介されています。このあたりになると、外出着と街着の違いとか、おしゃれ着と普段着の違いとか、どっちが上でどっちが下とか、正直わからなくなります。同様に、付下げと色無地と小紋と紬の順番も完全には決められないことが多いのは前に書いた通りです。

 さあ、ここまで細かく分ける必要があるのでしょうか。皆さんはそういう意識で洋服を選んでいますか。私は、これはもう意味がないと思っています。入門書で、正礼装から始まって最後までバランスよく紹介するのはわかりますが、実際に分けられないものを無理して分けてもややこしくなるだけです。それこそ、きものが難しくなってしまいます。

 もう一度洋服と比較してみましょう。洋服の略礼装はワンピース・スーツで、その次はあまり思いつきませんが、パンツ、カットソー、ジーンズなどでしょうか。当然略礼装のワンピース・スーツにもフォーマルよりからカジュアルよりまで様々あり、もはやどれが外出着でどれが街着という区分は現実的でないことがおわかりいただけると思います。

 きものもこれと同じで、礼装に縁のないひさかたろまんとしては、礼装以外は全部普段着でいいとさえ思います。そうすれば、少なくともきものも洋服の気軽さで、訪問着からもめんのきものまで、いろいろなところで区別なくお召しいただけるはずです。

 ・格ではなく着るのはきものなので、礼装以外は全部普段着でも良い

 

#016[きものの格について]格はなぜ難しい?

 さて、ここでもう一度、きものの序列を思い出してみましょう。
 留袖・振袖-訪問着-付下げ-色無地-小紋-お召-紬-ウール・麻・もめん・化繊
というものでした。これ以外の表現もあるでしょうが、どれもそれほど大きな違いはないと思います。さて、この順番をご覧になって何か気づきませんか。

 留袖、訪問着と、小紋あたりまでは柄の配置や有り無しの差だったものが、次いでお召しは織り方のことですし、最後は糸や素材の差になっています。素材でいうと絹はどこにも出てきませんが、留袖から紬までは絹が一般的です。同様に織り方でいうと、留袖から小紋までは普通、縮緬が使われることが多いでしょう。

 ですから、上の序列をより正確に捉えるには、
 柄配置(留袖など)~織り方(縮緬など)~素材(絹など)
の3要素で考えなければなりませんので、組み合わせはもっと何通りもできてしまいます。しかも、中には『紬で平織りの訪問着』のような例外的な組み合わせもあって、どこに当てはめるのかが難しくなります。また、例えばひとくちに訪問着といっても、フォーマル度が高いものから低い物まで様々ですので、それも複雑に絡み合って一層ややこしくなります。

 さらに実際には、これまで出てこなかったその他の決定要素もたくさん付け加えられます。例えば紋は重要です。これには五つ、三つ、一つ、なしという種類があり、単純に多い方が格が高いので見分け方は簡単です。一方、慣れないと難しいのが柄行についてで、例えば、格が高い-低いの順にいくつかご紹介すると、古典-モダン、重厚-軽快、和-洋、大-小、金銀あり-なしなど、まだたくさん出てきます。ここまで来ると、もはやプロである我々にも複雑すぎて、できれば触れずに済ませたくなります。ですから、一般の方にはややこしすぎるし、深入りしても意味がないというのが私の結論です。

 ・“格”の基準は一つでなく、それぞれにも程度の差があるのでややこしい

#015[きものの格について]格はどこでものをいう?

 前の章で、“格”というのはフォーマル度の順番だという基本をご理解いただけたでしょうか。では、その格がどう活かされるかというとこんな場面です。
 『結婚式で着るには少し格が低い』、『子供の入学式にはもっと格の高いものでないとおかしい』、『きものと帯は格を合わせるか、帯の格がやや上の方がよい』。

 最初のふたつはTPOの問題で、あとの一つは組み合わせの問題です。要するに格とはフォーマル度なのですから、TPOには当然大きく影響します。それもフォーマル度が高い正装になればなるほど厳密になります。そこで、既婚女性、夜という前提で、きものと洋服の礼装を比較してみると
  正礼装   黒留袖五つ紋  イブニングドレス
  準礼装   色留袖三つ紋  カクテルドレス
  略礼装   訪問着紋なし  ワンピース・スーツ
のようになるそうです。異論のある方もおいででしょうが、諸説あるということでお許しください。また、突然“紋”が登場しましたが、格と紋には切り離せないところがありますので、それもご理解ください。

 ここで注目していただきたいのは、正礼装や準礼装は、普通の人は一生のうちにそうそう体験するものでないということです。それに対して略礼装は、洋服ではワンピースやスーツに当たるわけですから、一気に日常生活に近くなります。ちなみに、ドレスコードの“平服”というのはこの略礼装を指すのだそうです。

 組み合わせの問題はまた後で触れるとして、TPOを考えるとき、黒留袖や色留袖以外は、略礼装の訪問着で相当部分がカバーできることなれば随分気が楽になりませんか。

 ・格とは主に正装のTPOで、略礼装の訪問着は広範囲をカバーする便利もの

 

#014[きものの格について]まず初めに、格とは?

 きものや着付けの入門書でよく目にするするのは、『きものには格というものがありますので、まずきものの種類と格を覚えましょう』という説明です。続いて、きものでは、
 留袖・振袖-訪問着-付下げ-色無地-小紋-お召-紬-ウール・麻・もめん・化繊
また、帯では、
 丸帯-袋帯-京袋帯-なごや帯-半幅帯
という序列が紹介されています。

 この、“格”があるからきものは難しい、ということもよく言われているようですが、そもそも、きものの格とは何でしょう。本来、格という言葉は格式、格調、品格、風格のように使われ、私自身、それは上か下かを決める言葉なので好きではありません。

 それはさておき、上の序列を見ると、格式、格調などは無視できないとしても、そこまで深く考えられたものではないような気もします。例えばきもの一つを取り上げて、このきものの格式は100点満点中の何点・・・といっても、それは人それぞれで違ってしまうでしょう。また、それを決めたところであまり意味もありません。

 そこで、いろいろな資料を見比べると、どうも順番が重要ということがわかります。そして、その説明には、実は必ず正(第一)礼装、準(第二)礼装、略礼装・・・と書かれています。ということで、“格”というのはフォーマル度の順番で、きものだけではなく洋服にもあるものと理解すればいいようです。しかし、洋服の格があまり話題にされずにきものの格だけが問題になるのは、きものは形が皆同じという特性と、洋服に比べて、とにかくきものには馴染みがないということが原因のような気がしています。

 ・格とはフォーマル度の順番で、きものだけでなく洋服にもある

#001 [和装を楽しみたい方へ] プロローグ

ひさかたろまんホームページへ、ようこそ。
ひさかたろまん製造元・佐啓産業株式会社、社長の佐藤です。
いつもお引き立ていただきありがとうございます。


 弊社は和装メーカーを90余年続けて参りました。ところが十数年前に小売店舗を開設したことで初めて、実際に製品をお使いになるお客様と直接お話しする機会ができました。そして、その会話を通して痛感したのは、きものが想像以上に理解されていないことでした。お客様に知識があるかないかということではなく、きものが必要以上に、とても難しいもの、ややこしいものと誤解されていると感じたのです。

 弊社ブランド“ひさかたろまん”のコンセプトをご存じでしょうか。それは、きものを気軽に気楽に楽しんでいただきたいということです。もちろん小売店舗“ひさかたや”も、その方針で運営しています。ですから、馴染みの薄いきものをどうやって気楽に楽しんでいただくか。あるいは、難しいことがあればそれをどう解決するか。そんなお手伝いをすることも大切な仕事の一部なのです。

 ところで、女性にきものを着たいですかという質問をすると、驚くほど高い確率で着たいという返事をいただきます。でも街では、ごくわずかなきもの姿しか見ることができません。ということは、着たい人の数と着る人の数とには、少なくとも実際には相当のギャップがあるわけです。そして、それには必ず理由があるはずです。それについて、まずは一歩ずつ細かく考え解決することが、きものを着ていただくことにつながると思います。

 そこで、“きものを着ない理由”について、これから考えてゆこうと思い立ちました。

 きものを難しいと感じている以外にも“理由”はたくさんあるようです。ただ、もちろんきものを着ない人自身にはなんの責任もありません。これは自然の成り行きによるものに違いないと思っています。となると、問題は情報発信側、商品供給側にあるのかもしれません。

 きもの供給側として、我々業界に携わる者はきもののことはそれなりにわかったつもりでいます。でも、実は我々の誰も気がついていない“理由”があるのではないか。あるいはその常識的な“理由”を、業界を上げて勘違いしたり無視したりしてはいないか。そのために、求められる適品が供給されていないという大問題はないのかと思うのです。だからこそ、問題を直視することで新しいものづくりにつなげようと考えたわけです。

 これは実際の声に対する私の思いです。受け売りではないからこそ間違いもあるかもしれません。ただ、正しいかどうかが問題ではなく、大切なのは私への賛否も含めた皆さんからの色々な声です。きものを着ていただくには、こうあるべきというよりも、こうあって欲しいという様々な思いを認めることが重要で、これが始まりなのだと考えます。

 少しずつアップしてゆきますので、全体の構成をお知らせしておきます。まずはきものを着ない理由を、”買えない”、”着られない”、”着て行くところがない”の3つの切り口から考えたいと思っています。全体構成は以下の通りで、番号順にアップするわけではないことを予めご了承ください。


  ● プロローグ (#001)

  A 買えない
    1.高い
      (1) きものが高い理由 (#002)
      (2) きものの適正価格 (#003)
      (3) 安いきものもあるけれど (#004)
    2.買うところがない (#005)
    3.買い方がわからない (#006)

  B 着られない
    1.きものを知らない (#007)
    2.着付けが難しい (#008)
    3.決まり事が多い (#009)

  C 着て行くところがない
    1.どこへ行っていいかわからない (#010)
    2.面倒くさい (#011)
    3.堅苦しい (#012)
  

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